支援員のお悩み相談室 第16回 学童に発達障害のある子がいます。どのように関わっていけばいいでしょうか?

回答者:下浦 忠治

2020.11.13

学童に発達障害のある子がいます。ほかの子どもたちにどのように話せば、その子の特性について理解してくれるでしょうか? また、どうやってお互いの関わりをつくっていくのがいいのでしょうか?

発達障害を持つ子への理解を促し、その子や保護者が孤立しないように、つながりをつくる

 

保護者の了承を得て、子どもたちにサポートの仕方を伝える

身体障害の場合は見てわかるので、子どもたちも正義感からフォローしてあげることが多く、ダウン症の子も子どもたちはわかるので、かわいがられやすい存在です。ところが、発達障害の場合は、見た目は変わらなくても言動が違うところが理解されず、「なんだ、アイツは……」というふうに見られてしまいます。ひとくちに「発達障害」といってもさまざまです。不注意や多動性、衝動性のある「ADHD」や、自閉傾向のある「アスペルガー」など、特性も程度もさまざまなため、理解されにくいのでしょう。

ほかの子どもからすれば、関わり方がわからないため「無視する」「見て見ぬふりをする」ことが起こります。発達障害の子はコミュニケーションが苦手で、自分から積極的に関わることができない子もいるため、孤立してしまうケースも多いと思います。

低学年の子どもは、発達障害を理解できない、知らない場合がほとんどだと思うので、まずはその子を理解してもらうための説明が欠かせません。私は保護者の了承を得たうえで、「どういう特性があるのか」「どういう場面が苦手で、何ができないのか」「どうサポートしてあげればいいか」、この3つを具体的に子どもたち全員に話しました。子どもたちがその特性を理解できれば、サポートしてくれることも増えます。2、3年生になれば、積極的に関わってくれる子もでてきます。

 

「一緒に何をすれば楽しめるのか?」を子どもたちと考える

以前、私が勤めていた学童に、部屋からすぐに飛び出してしまう子がいました。この場合、まず周りの子に、「彼が飛び出しそうになったら、すぐ止めてね」と頼んでおきます。次に、「一緒に何をすれば楽しめると思う?」とみんなに相談を持ちかけました。その子はくるくる回るものが好きだったので、ベーゴマで遊ぶことにしました。ヒモは巻けないけど、両手でひねって回せる子だったのです。そのうち、「回るものが好きなら、一輪車を教えたらいいんじゃないか」と、当時3年生の女子が一輪車の乗り方を教え始めました。練習して乗れるようになったことが本当にうれしくて、その子は毎日一輪車に乗るために学童に通ってくるようになりました。

あるとき、「部屋を飛び出してどこに行くのか、一緒に行ってみよう」と、みんなで出かけました。その子が行きたかったのは中古車販売所で、その上になびく旗を見たかったのです。それからはみんなで旗を見に行ってから、近くの公園で遊ぶのが定番の散歩コースになりました。おやつやお弁当の時間にじっと座っていられず、立ち歩くこともありましたが、「ダメだよ。食べるときはちゃんと座ろう」と注意する子がいて、少しずつおさまっていきました。

このように、関わり方を知って関係を築いていけば、ちょっと手を貸せばいろいろなことができるようになることを、周りも理解していくのです。放課後の生活の場で、みんなが発達障害のある子に関わることの意味は、どちらにとっても大きいのです。

発達障害の子には、その子がケガをしないようにしたり、生活を見守ったりする介助の支援員がつくことがあります。この場合子どもには、「その子のことは介助の支援員に任せておけばいい」と映ってしまいます。できるだけ同年代の子と一緒に遊ぶのが望ましいので、そのためにもやはり、発達障害のある子についてどう紹介するのかが大事になってくるのです。

孤立していることが多い保護者を支える視点も持って

発達障害を持つ子の保護者のなかには、そのことを明らかにしてほしくない人もいます。しかし、「子ども同士の関わりをつくるために、必要なことですよ」と、よく説明して理解を求めましょう。保護者会などで、幼いころからの様子を語ってもらい、「うちの子は今こういう状況で、こういうことをサポートしてもらえると助かります」と、ほかの保護者にも伝えてもらいます。また、支援員はお迎えのときや連絡帳で、その子の学童での様子を報告し、普段から保護者とつながるように心がけるといいですね。学童における発達障害のある子への関わりでは、子ども同士だけでなく、保護者と支援員、また保護者同士の関係も大切です。親を支えていくことは、その子を支えていくことにつながることも忘れてはいけない大事な視点です。


(文・構成 生島典子)

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下浦 忠治

回答者プロフィール下浦 忠治 (しもうら・ちゅうじ)

1950年、奈良県生まれ。74年から東京都品川区で35年間、指導員として学童保育に携わる。2009年に退職。日本社会事業大学専門職大学院で「学童保育とソーシャルワーク」を開講。15年まで社会福祉士として東京都の児童相談所に勤務。現在は、東京成徳大学子ども学部で非常勤講師を務める。1都7県で放課後児童支援員認定資格研修の講師も担当。著書に『どの子も笑顔で居られるために 学童保育と家族支援』(高文研)、『放課後の居場所を考える』(岩波ブックレット)など。