支援員のお悩み相談室 第20回 高学年のいじめや暴力で学童が荒れています。どう対処すればいいでしょうか?

回答者:河野伸枝

2021.03.10

高学年も通う学童です。高学年の子が低学年の子の面倒を見てくれるといいのですが、逆に低学年の子をいじめたり暴力をふるったりします。低学年の子も、そのまねをして学級崩壊のような状態です。どのように対処すればいいでしょうか。(一部省略/兵庫県・支援員歴4~9年)

高学年には思春期ならではのイライラやストレスがあります。叱るだけではなく、その子の思いを受け止めてあげましょう。

 

低学年だけでなく、高学年の思いも受け入れて

異年齢の子どもが一緒にいると、つい「上の子はしっかりしなさい」「上の子が下の子の面倒を見て」になりがちですが、学童保育(放課後児童クラブ)は「生活の場」です。高学年の子にも自分らしく自由に過ごしてほしいので、私は、ストレスを抱えている高学年の子たちに、無理に「低学年の子たちにやさしくしてね」とは言えません。

高学年の子のトラブルが起きた場合、荒れている子を取り押さえるだけでは根本的な解決にはなりません。まず、その子がなぜ乱暴なことをするのか、その背景を考えてみましょう。

高学年になるほど、学校や家庭や友達関係などで、低学年の頃にはあまり感じなかったイライラやむかつきを抱え込んでいることがあります。また、思春期特有の反抗心も出てきます。高学年になると言葉も容赦ないので、何か問題が起きると、今まで積み重ねてきたものが根こそぎ踏み倒されるような気持ちにもなるでしょう。

しかし、生活の面では手がかからなくなっても、気持ちのうえではまだ「自分の思いを受け止めてほしい」「認めてほしい」という思いを持っているのが高学年です。そのため、支援員は叱るのではなく、まずはその子たちが抱えているイライラやむかつきに心を寄せていくことが大切です。支援員がきちんと向き合って話を聞くことで、子どもが「心のモヤモヤを受け止めてくれる人がいる」という安心感を得たとき、やっと心に余裕ができて、下の子にもやさしくなれるのです。上の子たちが落ち着くと、下の子たちも自然と落ち着いていきます。そのためには日頃から、高学年の子たちが、自分のイライラやむかつきなどの愚痴をこぼせるような関係性ができているといいですね。

逆に、叱ったり怒ったりするだけの関わりや、低学年へのいじめや暴力を「手が付けられない!」と見て見ぬふりをしてしまうと、高学年の子たちは「見捨てられた」と感じてしまいます。また、「高学年が荒れて困っている」と大人が感じていることが言動などから伝わってしまうと、余計に子どもの居場所がなくなってしまいます。こうした「やっかいもの扱い」の雰囲気は、さらなる荒れを引き起こし、悪循環にはまってしまうこともあるのです。

 

叱るだけでなく、頼ってみるのも手

学童はどうしても低学年中心の生活になりがちで、高学年の子たちは物足りない思いをしているのかもしれません。低学年の子たちを守りながら、高学年の子たちも楽しめるような工夫をしていきましょう。「みんなが楽しめる学童をつくっていくために、力を貸してくれない?」などと頼りながら、日々の生活や行事のときには高学年に主体的に関わってもらい、力を発揮してもらうと、高学年にとってもやりがいができ、楽しい場所に変わっていくのではないかと思います。


(文・構成 生島典子)

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河野伸枝

回答者プロフィール河野伸枝  (こうの・のぶえ)

1959 年、鹿児島県生まれ。幼稚園教諭を経て、90 年に埼玉県原市場学童保育の支援員となる。支援員歴は30 年。これまでに、全国学童保育連絡協議会の副会長、埼玉県学童保育連絡協議会の副会長などを歴任。現在は、一般社団法人飯能市学童クラブの会の理事を務める。2015 年から始まった放課後児童支援員認定資格研修の講師も担当。著書に、『わたしは学童保育指導員―子どもの心に寄り添い、働く親を支えて』(高文研)、『子どもも親もつなぐ学童保育クラブ通信』(高文研)など。