支援員のお悩み相談室 第23回 宿題がわからないと悩んでいる子に、どこまで教えていいのかわかりません。
学童保育で子どもたちが宿題をするとき、どこまで教えてあげればいいのか悩みます。学校の先生ではないので、「わからない」と言われて簡単に答えややり方を教えてしまうと勉強にならないのでは、と対処に困っています。(神奈川県・支援員歴4~9年目)
宿題を教えるときは、子どもと一緒に「何がわからないのか」を確認しながら進めます。
学童保育で宿題をしても、最終的な宿題の確認は保護者がすることを刷り合わせておきましょう。
宿題がわからない子どもと、一緒に確認しながら進める
帰宅後に忙しい保護者が「学童保育(放課後児童クラブ)で宿題をすませてきてほしい」と思う気持ちはよくわかります。施設によって考え方はさまざまでしょうが、私が勤務する学童保育では、子どもに宿題をするように促す「学習タイム」を設けています。「宿題の半分は学童保育でやっていこうか」などと声かけをします。あくまでも声かけが中心で、強制的に宿題をさせることはありません。
宿題がわからない子に勉強を教える場合、いきなり答えだけを教えることはしません。「何がわからないの?」など、どこがわからないのかを一つひとつ確認して進めます。国語は文章を一緒に読んでわからないところを見つけ、理解しやすい形で説明します。算数は、1年生ならおはじきを使って説明することもあります。説明してひとつ理解できたら、「この先は一人でやってみようか」と、自分で考えて解く段階につながるよう促します。
国語や算数の文章問題を実際に教えるとき、工夫していることがあります。問題を解く作業を分解して行うことです。具体的には、「1.一緒に声を出して、問題を読む」「2.読んだ内容を子どもと確認する」「3.子どもがどこにつまずいているか、私が理解する」「4.私が書いたメモなどを使って説明する(その際、できるだけ説明のステップを細かく分け、子どもが理解できたか確認しながら進める)」「5.説明が理解できたら、子どもが自分で解いてみる」というように、やることを区切って「じゃあ次は~するよ」と伝え、進めるのです。時間はかかりますが、こうしたほうが子どもは理解しやすいようです。
この流れに沿ってスムーズに進められればいいのですが、途中でつまずく場合は、前の段階に戻り、改めて一緒に考えながら、また繰り返します。最初は聞くことに集中するよう、子どもにえんぴつは持たせません。自分が書く段階になって、初めてえんぴつを持たせます。大人は、人の話を聞きながら書くという作業をひとまとまりとしてできますが、小学校低学年の子どもは、同時にいろいろなことをするのは難しいのです。
なお、子どもが見通しを持てるよう、「プリント1枚やったら終わりね」「30分やったら終わりね」など、分量や時間などゴールを設定することもあります。10分でプリント1枚終わればよし。終わらなくても30分たてば、宿題はおしまいにします。「もう1枚やってみようか」「あと10分頑張ってみよう」など、目標を途中で変更することはしません。そうなると、子どもは次から頑張れなくなるかもしれないからです。
宿題の仕方は、事前に保護者と刷り合わせを
宿題については、家庭や子どもの状況に応じて、もう少し踏み込んだ声かけをする場合もあります。連絡帳に、「習いごとで早く帰るので、その前に宿題を終わらせてほしい」と書かれることもあります。その場合は、「宿題のこと、お母さんから言われているよね」と促します。家庭の事情で学習が遅れている子には、おやつのあとに30分限定で、支援員や指導員が子どもの隣に座り、宿題に取り組んだこともありました。
学童保育で宿題に取り組むとしても、保護者には、「最終的な宿題の確認はご家庭でしてほしい」と事前に伝えています。家庭での確認がないと、実際に宿題をしたかどうかがわからないだけでなく、子どもがどこで勉強につまずいたのか、保護者が把握できないからです。宿題以前の話として、翌日の持ち物を確認することや、学校からのプリントの受け渡しも含めて、家庭での最終チェックは欠かせませんよね。
学校から帰り、ホッとひと息つく時間も大切
学童保育で宿題に取り組む場合、子どもたちの放課後の生活リズムをどのように組み立て、その中で宿題をどう位置付けていくかを考える必要があります。保護者の大変さや、「帰宅後に宿題をさせる時間はない」という気持ちはよく理解できます。しかし、保護者には一度、子どもの視点に立って考えてみてもらう必要もあります。
大人でも、外で働いて疲れて帰宅して、そのままの勢いで家事を始めるのはしんどいはず。ちょっとひと息つきたいでしょう。子どもも同じで、学校が終わって学童保育に帰ってきたら、ホッとひと息ついて落ち着いてから、「さて何をしようか」と考えたいのです。そうした学童保育で過ごす子どもの思いを保護者に理解してもらいましょう。そのうえで、宿題の取り組み方について、子どもと相談してもらいましょう。
保護者会の交流テーマとして「宿題」を取り上げ、保護者同士で話す機会をつくることもいいですね。「夜は宿題の時間が取れないので、早起きして朝に宿題をする」などといった話を保護者の方から聞いたこともあります。こうした各家庭の考え方や取り組み方の工夫は、ほかの家庭の参考にもなるようです。
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回答者プロフィール 高橋 誠 (たかはし・まこと)
1968年、東京都生まれ。91年に東京23区に入区し、現在、区内児童館長(放課後児童クラブ担当兼務)。指導員歴は30年。東京都放課後児童支援員認定資格研修および資質向上研修の講師を務める。白梅学園大学非常勤講師および全国学童保育連絡協議会事務局長。