支援員のお悩み相談室 第25回 在籍する児童数が年々増え、大規模化しています。少しでも上手に運営する方法や工夫の仕方はありますか?

回答者: 高橋 誠

2021.08.17

勤務先の学童保育に在籍する子どもの数が増えて、大規模化しています。それに伴い、十分に支援員・指導員の目が届かなくなり、トラブルも増えています。どんな点に気をつけて運営するといいのでしょうか?

子どもの様子をできるだけ把握して、子ども同士、また支援員・指導員とのつながりが希薄にならないようにしましょう。

 

大規模化すると一つの集団としてまとまりにくい

厚労省が策定した「放課後児童クラブ運営指針」では、「子どもが相互に関係性を構築したり、1つの集団としてまとまりをもって共に生活したり、放課後児童支援員等が個々の子どもと信頼関係を築いたりできる規模」として、「おおむね40人以下」という考えが示されています。しかし、実際にはそれを超えて大規模化している放課後児童クラブ(学童保育)が存在するのが現実です。

学童保育が大規模化すると、いろいろな問題が生じてきますが、その原因はおおむね子ども同士の関係、また支援員・指導員と子どもの関係が希薄になってしまうことにあります。

一定規模の集団の場合は、同じ空間を過ごすことで、あまりかかわりがなくても、子ども同士お互いをある程度理解して過ごせます。一人で静かに本を読んでいる子に対しても周囲の子の理解があり、全体として一つの集団が形成されます。しかし、大規模になると、子どもは数人の小集団に分かれるようになります。そして、自分の小集団以外の他者に対しての興味関心が薄れ、その結果、全体が一つの集団としては成立しなくなるのです。なかにはどの集団にも属せず、一人で過ごさざるをえない子も出てきます。

また、支援員・指導員の目も全員に届きにくくなります。絶えず視界に入れておく必要がある子や、自分から支援員・指導員とのかかわりを持とうとする子のことは把握しやすいのですが、一人で静かに過ごせてしまう子のことは、抜け落ちてしまいがちです。

支援員・指導員が忙しいと、子どもに声をかけられても「ちょっと待って」となり、しばらくたつと誰に「ちょっと待って」と言ったのかすら忘れてしまうということもあります。そうしたことが続くと、子どもは大人を頼ったり、信用したりしてくれなくなります。

子どもの様子について共有し、支援員・指導員集団としてかかわる

では、どう対処したらよいか。子どもが学童保育に帰ってくる前の時間に、それぞれの支援員・指導員が知り得た子どもの様子についての情報共有と、その日の保育の流れや役割分担を確認しておくことが重要になります。適正規模の学童保育でも取り組まれるべきことですが、大規模の学童保育ではより意識して取り組まなければいけません。情報共有の際には、できるだけ具体的に報告し合う必要があります。事前の打ち合わせは、その日の保育に見通しを持つことにもつながります。実際の現場では、急に予定や役割分担が変更になることもあるので、支援員・指導員同士が声をかけあい、その場に求められる対応を図りましょう。

全体をまとめるには、子ども自身が「生活の主体者」として一日の生活の流れを理解することも必要です。子どもに説明する際には、口頭だけでなく、掲示物やホワイトボードを活用するなどの工夫も取り入れましょう。子どもを一堂に集めて説明するのは、それだけでひと苦労です。学年ごとに分けるなど、子どもが話を聞きやすい状況を作る配慮も求められます。

声かけや一緒に遊ぶことを通じても、子どもへの理解が深まります。子ども同士、また小集団同士の橋渡しをしていくことが求められるので、全体でゲームをするなどの取り組みも有効ですが、その際は、個々の子どもの状況に応じ、参加を無理強いすることがないようにしましょう。

 

保護者の協力が不可欠

現場での工夫はもちろんですが、保護者の協力もまた不可欠です。私自身が大規模の学童保育に勤務していたときには、子どもたちについて学童保育での様子を保護者に伝え、保護者からは家庭での様子を伝えてもらうことで、一人ひとりの子どもや家庭への理解を深めるよう努めてきました。具体的には、以下の3点について、保護者にお願いしました。

①できるだけ毎日学童保育に通わせてほしい

人数が多いからこそ、毎日のかかわりがないと、子どもへの理解が薄れてしまいます。できるだけ子どもを学童保育に通わせてほしいとお願いしました。

②連絡帳を持たせてほしい

「連絡帳は1年生のみにしたほうが先生の負担を減らせるのではないか」と配慮をしてくれる保護者もいました。しかし、連絡帳は家庭と学童保育それぞれの日常の様子を伝え合う大切なつながりだからこそ、毎日持たせてもらうことをお願いしました。

③何か気になることがあれば、伝えてほしい

子どもが学童保育では言えないことでも、家庭では話している場合もあります。「何か気になることがあれば、支援員・指導員に伝えてほしい」とお願いしました。

大規模化した学童保育では、子ども同士の関係、また支援員・指導員と子どもの関係が希薄になってしまわないように、子ども、支援員・指導員、保護者とが、お互いにしっかりつながることを意識したかかわりや、そのための取り組みが求められるのです。


(文・構成 生島典子)

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 高橋 誠

回答者プロフィール 高橋 誠 (たかはし・まこと)

1968年、東京都生まれ。91年に東京23区に入区し、現在、区内児童館長(放課後児童クラブ担当兼務)。指導員歴は30年。東京都放課後児童支援員認定資格研修および資質向上研修の講師を務める。白梅学園大学非常勤講師および全国学童保育連絡協議会事務局長。