支援員のお悩み相談室 第27回 ちょっとしたことでもすぐに泣いてしまう子がいて、周りの友達は困っているようです。対処法があれば知りたいです。
友達とのトラブルなど、ちょっとしたことでもすぐに泣いてしまう子がいます。泣いている理由を聞くとささいなことなのですが、周りの友達も泣かれるとそれ以上強く言うことができずにとまどっています。このような場合、どう対処するのがいいのでしょうか?
「泣くこと」は悪いことではありません。学童保育が感情を出せる場所であることが大事です。
学童保育は「喜怒哀楽」の感情を出していい場所
ちょっとしたことですぐに泣いてしまう子に対して、周囲の子どもは困ってしまうかもしれませんが、学童保育が、悲しいときやつらいときに素直に泣ける環境であることが大事です。「みんなの前で泣いちゃいけない」と思って我慢している子どもがいるかもしれません。しかし、指導員・支援員は、「学童保育で自分の感情を出すことは悪いことではない」と理解し、子どもたちに接していきましょう。
学童保育が子どもたち一人ひとりの居場所となるためには、次の3つを確認しておきたいですね。
1 ゆったり過ごせるスペース
2 感情の喜怒哀楽をかみしめられる関係性
3 子どもにとって信頼できる指導員・支援員の存在
マイナスの感情を無理にプラスに転化しなくてもいい
日常的に「集団生活の中ではちゃんとしなくちゃいけない」という考えが、大人にも子どもにも自然と植え付けられています。だから子どもが泣いたとき、その子が抱える怒りや悲しみといった感情をよくないものととらえ、どうやって喜びや楽しさといったプラスの感情に転化すればいいのか、と発想してしまいがちです。しかし、怒りや悲しみの感情を持つこと自体が悪いわけではありません。そういうマイナスの感情がわき上がったときこそ、じっくり向き合ってみる時間があってもいいと思います。
子どもが一時的に怒りや悲しみと向き合って泣いていても、ずっとそのままということはありません。必ずどこかで泣きやんで起き上がってくるはずです。「いつまでも泣いていないで」というのは、見ているほうがつらくなって発する言葉です。子どもたちの中にある感情を受け止めて、泣きやむまでそばで見守ってあげましょう。泣きやんだあとに、「悲しかったんだね」と気持ちを受け止めてあげるくらいでいいのです。
感情が高ぶっている場合は別室で落ち着かせることも
子どもによって対処の仕方は違いますが、友達に泣いているところを見られたくない場合などは、別の部屋に連れていくこともあります。声のかけ方も、子どもによって変えています。「落ち着くまで別の部屋に行ってくる?」と聞くこともあれば、感情が高ぶって泣いているときは、「あっちに行こう」とクールダウンのために連れていくこともあります。
感情が高ぶった状態でみんなの中にいると、外からの情報がそのまま刺激として入ってくるため、落ち着くまでに時間がかかるからです。その場合、泣いている子がペナルティーとして別室に連れていかれるのだと、当人も周囲の子どもも勘違いしないように、「悲しいとき、つらいときにみんなと一緒にいたくなかったら、別の部屋で泣いてもいいんだよ。気持ちが落ち着いたら戻っておいで」と、子どもたち全員に伝えています。
学童保育では、「泣く」という行動も含めた子どもたちの喜怒哀楽をかみしめる場所と時間をどのように保障していくかが課題です。よく泣く子がいる場合、周りは「いつも泣いてしまって、どうしようもない」という空気になりがちですが、指導員・支援員は、「つらいときにつらいと言えること、表現できることは大事なんだよ」としっかり伝えていきましょう。
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回答者プロフィール 高橋 誠 (たかはし・まこと)
1968年、東京都生まれ。91年に東京23区に入区し、現在、区内児童館長(放課後児童クラブ担当兼務)。指導員歴は30年。東京都放課後児童支援員認定資格研修および資質向上研修の講師を務める。白梅学園大学非常勤講師および全国学童保育連絡協議会事務局長。