支援員のお悩み相談室 第38回 4月から主任になりました。どんな点を工夫していくべきでしょうか?
4月から主任として働いている者です。主任として現場で工夫していく内容を考えなければならないのですが、どんなことに取り組めばいいのかよくわかりません。「こんなことをしてみれば?」ということがあれば教えてください。(大阪府・支援員歴4~9年目)
学童保育で働く支援員全体のリーダーをめざしましょう。
主任として保育の経験を同僚や後輩に伝える
学童保育は、保育園のように園長や副園長のような役職がいないことが多く、学童保育の主任は、いわば現場のリーダーです。そこで働く支援員は、何かあったときには一番に主任を頼りますし、保護者から相談を受けることも少なくありません。現場のリーダーとして、支援員や保護者の方に適切なアドバイスができるように、常に知識を身につけておく姿勢が必要です。子どもたちだけでなく、支援員を守るという責任も生じます。
支援員歴が浅いときは、遊びの中で子どもとどう関わり、子どもの変化をどう受け止めるかが仕事の中心だったと思います。しかし主任という役職についたら、自分がやっている仕事や、学童クラブの保育観・保育目標などを共有して、それを一緒に実現してくれる同僚や後輩を育てることが目標になります。
役職が上がるほど管理のような仕事も増えて、現場から離れる場面も出てくるでしょう。これまでやってきた仕事も含めて全部自分で抱え込んでいたら、現場を回せなくなってしまいます。つまり自分がいなくても、「保育が守られるか」ということを考えてみてください。立場が変わったばかりだとすぐにはできないかもしれませんが、保育目標や目指す子ども像、年間の保育計画などをていねいに共有しながら、伝えていくといいでしょう。
保育計画は率先して提案しながら、同僚や後輩からの提案も受け入れて一緒に考えていくといいですね。さらに、保護者からの要望も取り入れつつ、子どもを真ん中にして保護者と支援員が一緒に考えて保育計画をつくっていきましょう。そのための土台や環境をつくることが、主任として大事な仕事です。定期的に行う職員会議の中で支援員が自分の意見を言いあったり、思いを共有したり、個々の子どものケースについて確認できているかどうかがコミュニケーションの土台となります。そのような会議の運営ができているかどうかにも気を配りましょう。
やってもらいたいことを自分から相手に示す
立場が上になってくると、「相手にこうしてほしい」と思うことが出てくるものですが、「やってもらいたいことを自分から相手に示す」ということも、私のやり方のひとつです。
たとえばコミュニケーションの基本であるあいさつ。これが意外と苦手な人が多いのですが、「なんであいさつしないの」と注意するのではなく、私から進んであいさつをします。ちゃんと相手の目を見てあいさつすることは、「私はあなたを見ていますよ」ということを伝える手段にもなります。お礼をうまく言えない人には、私から「ありがとう」と言います。一見あたりまえのようですが、日常の会話のキャッチボールは、相手のことを知るいいチャンスにもなるのです。
また、自分がリーダーで子どもたちの前で話しているのに、ザワついて静かにならないときでも、周りの支援員に「なんでサポートしてくれないの」と注意するのではなく、別の場面で自分が「こうしてほしい」と思ったサポートをしてみせます。言葉で伝えることも大事ですが、相手にやってほしいことを行動で示すと伝わりやすいと思います。そうして「こうすればいいんだ」とうまくいった実感を相手と共有できれば、人と人との関係性が生まれてきます。
同僚や後輩の支援員から相談・悩みを聞き取ること
主任のもうひとつの仕事は、同僚や後輩の支援員の相談や悩みを聞くことです。主任になった途端に、「悩みや相談はありますか?」と後輩の支援員に聞いても、「ない」と言われるかもしれません。しかし、子どもと日々関わっていく中で、「自分の関わり方がどうだっただろう」「うまくいったかな?」「もっと違う方法があったかも」といった悩みはつきもの。自分の保育を振り返ったり悩んだりすることは支援員としての成長に欠かせません。職場の支援員が「この人は自分のことを見てくれている」と感じれば、おのずと相談も増えてくるでしょう。
そのためにも、自分から困っていることなどを相談しながら、一緒に考えることも有効です。「私もこんなふうに思った」という会話ができるし、子どもの新しい情報が聞けることもあります。「自分が話したことや会話が、現場の保育に役に立った」という感覚が生まれてくると、次の相談につながっていきます。普段から何げない日常の会話ができる雰囲気をつくり、信頼関係を築くことが大切です。
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回答者プロフィール小野 さとみ (おの・さとみ)
1962年愛知県生まれ。名古屋市、東京都八王子市や町田市で放課後児童クラブ支援員として勤務し、支援員歴37年。現在は町田市の放課後児童クラブの支援員。
全国学童保育連絡協議会・副会長、月刊『日本の学童ほいく』編集担当役員を務める。