支援員のお悩み相談室 第53回 保護者とのコミュニケーションが苦手です。どんな話をすればいいのか、どう関わっていけばいいのかわからず悩んでいます。
普段の送迎や保護者会などで、保護者と何を話せばいいのか、どんな言葉づかいをすればいいのかわからず悩んでいます。配慮が必要な家庭環境の方や、外国籍で日本語が得意でない方も増えています。このような状況で、どのような距離感で関わっていくのがよいのでしょうか。
自分ができる範囲のコミュニケーションを心がけ、それぞれの保護者との交流方法を模索しましょう。
学童での子どもの様子を伝えることから
保護者との関わり方でまず大事なのは、あいさつです。私は経験の浅い支援員には「無理に話そうとしなくていいので、あいさつをしっかりしましょう」と伝えています。「おはようございます」「こんにちは」「ありがとうございます」など、笑顔できちんとあいさつすることがコミュニケーションの第一歩です。また、「です・ます」をつけるなど、必要最低限の敬語を使うことも大切です。保護者と仲良くしすぎて友達のような関係になってしまうと、かえってつらくなることもあるからです。この2つから始めてみてください。
話題は、子どもの日常の様子を伝えるのが基本です。「今日、こんなことを言っていましたよ」「ちょっと浮かない顔をしていたので、おうちでも様子を見てあげてください」などです。私が保護者とコミュニケーションをとるときは、子どものいいところや 、がんばっている姿、おもしろかった出来事などを伝えるようにしています。とくにエピソードがなければ、「本当にいい天気ですね」「雨の中、お迎えお疲れさまです」など、ささいなことでも十分です。
保護者との会話を負担に感じるなら、直接話す以外の、自分が得意な方法でコミュニケーションを取ればいいと思います。例えば、「こういう発見があった」「こんないいところがあった」と、日々の子どもとの関わりや出来事を、連絡帳を通して伝えることも保護者との交流方法のひとつです。話すのも書くのも苦手という場合は、無理せず、できる支援員にカバーしてもらいましょう。ほかの支援員に「○○先生が言っていたんですけど~」「○○先生と遊んでいたら、子どものこういう姿が見られたんですよ」などと言ってもらい、自分が子どもとしっかり関わっていることが保護者に伝わればいいのです。
全員が同じ方法で保護者と接する必要はありません。保護者と話すことが苦手でも、子どもとの関わりが上手だったり、分析力があったり、着眼点がよかったりすることもあります。それぞれの支援員の得意・不得意をお互いが知ったうえでフォローし合う関係を築けると、働く際の負担感が減ると思います。
コミュニケーションが難しい保護者にも身構えすぎず
私が勤務する学童保育にも外国籍の子がいます。保護者との面談や懇談会のときには、市が手配した通訳を介して話をします。その方は、ひらがなは読むことができるので、メールや連絡帳など文字のやり取りの際にはひらがなだけで必要なことを伝えるようにしています。「日本語を話すのは難しいが、聞くことはできる」など、言語を理解するレベルもそれぞれでしょうから、どういう手段なら伝わるのかを事前に聞いて対応していきましょう。最近ならスマホの翻訳機能も便利ですね。
宗教上の理由でさまざまな要望が出ることもあります。「宗教上食べられないものがある」「お祈りの時間を確保してほしい」というリクエストには、できる限り対応するようにしています。周りの子どもたちも「そういうものだ」とすぐに慣れてしまうものです。お互いにできるコミュニケーションをしつつ、あまり身構えずに徐々に交流を深めていけばいいと思います。
普段のコミュニケーションが困ったときに生かされる
家庭環境や病気などで、保護者の方もコミュニケーションを取りにくいという場合があります。「人との関わりが苦手なので、学童保育の行事や懇談会に出たくない」という保護者もいますし、保護者が発達障害で日常生活を送ることが難しいという場合もあります。どの程度関わっていくのがいいのか個別に相談したり、こちらができることを提案したりしながら、それぞれに合ったコミュニケーションの仕方を模索していきましょう。
気持ちに波がある保護者に、あらかじめ「精神的にも体力的にも厳しいときは、伝えてくださいね」と言っておいたら、連絡帳に「最近体調がすぐれない」と書いてくれたことがありました。支援員間で共有して、「保護者の気持ちが復活するまでそっとしておこう」など、状況に合わせた対応ができます。ごはんをあまりつくってもらえていないようだと判断したら、おやつをちょっと豪華にしていっぱい食べられるようにすることもあります。関わりすぎると迷惑だと感じる人もいるので、保護者の様子をうかがいながら対応するようにしています。
学童での様子を伝えたり、家庭での様子を教えてもらったりすることは、学童保育の中でみんなが楽しく安心して過ごせるようにするために欠かせません。普段から保護者とのコミュニケーションができていれば、何か困ったことがあったときにさりげなくフォローもできます。支援員みんなで助け合いながら、学童全体で保護者とコミュニケーションをとっていく対応を検討していきましょう。
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回答者プロフィール池本絵美 (いけもと・えみ)
鳥取県生まれ。鳥取市の放課後児童クラブ支援員として勤務し、支援員歴 14 年。
鳥取県学童保育連絡協議会では事務局次長として「西日本指導員学校」の運営に携わっている。