支援員のお悩み相談室 第3回 保護者から「宿題をさせてほしい」と言われますが、遊びの時間との兼ね合いが難しい

回答者:下浦 忠治

2019.11.08

保護者から「放課後児童クラブで宿題を終わらせてほしい」という要望が多く寄せられます。働いている保護者の気持ちもわかりますが、学校の授業を終えた子どもたちは、遊びたい気持ちでいっぱいです。支援員はどう対処すればいいのでしょうか?

宿題をどうするかは、家庭で話し合って決めてもらいましょう

 

「家庭を支援する」という目線を大切に

「放課後児童クラブにいる間に、宿題を済ませて帰してください」という保護者からの要望は、いつの時代にも多く寄せられます。特に小学校1年生はまだ体力もついておらず、朝から学校で活動し、放課後児童クラブを経て帰宅するともうクタクタ。ごはんを食べてお風呂に入ったら、宿題をする前に疲れ果てて寝てしまいます。保護者も帰宅して慌てて夕ごはんの支度やお風呂の世話をしていると、宿題を促したり、チェックしたりする余裕がありません。だからこそ「宿題は済ませてきてほしい」という要望になるのでしょう。

宿題をどの時間帯でやるのかは保護者にとってもひとつの課題です。「宿題は親として見てあげたいので、放課後児童クラブでは遊んできてほしい」という家庭もあれば、「親の帰宅が遅く、家で宿題をさせるのもひと苦労なので、放課後児童クラブでやってきてほしい」という家庭もあります。そうした声や実態を受け止めて、現場ではさまざまな対応をとることになります。

放課後児童クラブで宿題をするかしないかは、基本的には家庭で話し合って決めてもらいましょう。それぞれの家庭の状況が違うからです。放課後児童クラブはある意味、家庭を支援する存在でもあるため、保護者の手助けになることは大事なことだと思います。そのため「宿題をしてきてほしい」という要望のあった子どもには「宿題やろうね」と、声かけをします。

逆に要望がなくても、連絡帳などで保護者と子どもの様子を伝え合うなかで、帰宅後に宿題をやるのが難しそうな子どもには宿題をするように促し、わからないところがあれば教えることもあります。放課後児童クラブは塾ではありませんが、子どもが学習でつまずくことで、その子の成長に関わってくる問題があるならば、家庭と話し合って対処を考えるのです。

私がいた放課後児童クラブでは、その日の子どもの選択に任せていましたが、友達が宿題をしているのを見て「あ、おれもやろう」という感じで、遊び同様、周りの友達に触発されて自ら宿題に取り組んでいる子どもも多かったですね。わからない問題があると、子ども同士で教え合う場面もしばしば見受けられました。

 

取り組んだ宿題は、保護者に確認してもらうように

ただ、保護者が放課後児童クラブの役割や意味を知らないと、「放課後児童クラブは遊んでいるだけなんだから、宿題くらい見てほしい」という気持ちで子どもを預け、宿題をしてこないと「なぜ宿題をさせてもらえないのか?」という不信感が募ってしまいます。なかには、塾のプリントを20枚持たせて、「放課後児童クラブでやらせてください」という保護者もいます。大量のプリントをさっと片付けて遊べる子はいいのですが、ダラダラと時間がかかってしまう子は、遊びたいのに遊ぶ時間がとれずに、ストレスがたまってしまいます。

保護者には「放課後は、課題から解き放たれた遊びを軸とした生活の場である」ということをキチンと伝えて理解してもらうようにしたいですね。できれば年度初めの保護者会や保護者通信などで支援員としての思いや考えを伝えるようにしましょう。

その上で、「放課後児童クラブで宿題を終わらせてほしい」というリクエストがあった場合、保護者には「必ず子どもが取り組んだ宿題をおうちで確かめてあげてくださいね」と伝えましょう。そうしないと子どもがどんな字を書いているのか、どこでつまずいているのか、保護者はわからないままになってしまいます。宿題を見ることは、保護者が子どもの成長を確認する手段でもあります。支援員も保護者と一緒に、子どもの成長を見守る立場でいたいですね。


(文・構成 生島典子)

 

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下浦 忠治

回答者プロフィール下浦 忠治 (しもうら・ちゅうじ)

1950年、奈良県生まれ。74年から東京都品川区で35年間、指導員として学童保育に携わる。2009年に退職。日本社会事業大学専門職大学院で「学童保育とソーシャルワーク」を開講。15年まで社会福祉士として東京都の児童相談所に勤務。現在は、東京成徳大学子ども学部で非常勤講師を務める。1都7県で放課後児童支援員認定資格研修の講師も担当。著書に『どの子も笑顔で居られるために 学童保育と家族支援』(高文研)、『放課後の居場所を考える』(岩波ブックレット)など。