支援員のお悩み相談室 第4回 子どもが言うことを聞かないとき、どのような声かけをすればいいのでしょうか

回答者:下浦 忠治

2019.12.10

支援員になったばかりです。みんなで食べるおやつの時間を守らない子、いっせいに作業をしたいときに言うことを聞かない子などに注意をするとき、どんなことに気をつけて声かけをしたらいいのでしょうか。毎回悩んでしまいます。

注意をするときは否定的な言葉ではなく、肯定的な言葉を使うように心がけましょう

 

注意を肯定的な言葉に変換してみよう

子どもにとって、放課後を一緒に過ごす支援員はどんな存在でしょう。保護者でも学校の先生でもなく、しいて言えばいつもそばで寄り添う「子どもの応援団」です。支援員であった私が「下浦先生」と呼ばれるより「しも」、「しもせん」と呼ばれていたということからも、その関係性がわかると思います。ですから、支援員は子どもに何かをしつけたり、教育したりするのではなく、遊びや生活を共にしながら子どもを見守り、支援していく存在だと思ってください。

子どもたちに注意をするときに「○○しなさい!」「なんでできないの!」など、つい禁止の強い言葉を使いがちですが、それだけでは口うるさい存在になってしまいます。なるべく否定的な表現や言葉ではなく、肯定的な表現や言い方を考えましょう。たとえば、部屋の中を子どもが走っていて危ないときは、「走るなー!」ではなく、「室内では歩こうね」と言い換えると肯定的になります。肯定的な言葉選びを意識しているのといないのでは、子どもに与える印象が大きく違います。

集団生活では遊びやおやつの時間なども決まっているため、焦って子どもたちを追い立ててしまいがちです。そんなときでも「一緒にそろってから食べよう」「○○君、待っているよ」など、一人ひとりのペースでやる気を起こさせる言葉選びを心がけましょう。

 

子どもたちに相談するスタイルで自己決定を促す

もうひとつ心がけたいことは、注意をするときでも共感する言葉をかけることです。何かに熱中している子どもに、違うことをさせるのは大変です。たとえば、遊んでいる子どもたちを他の取り組みに移らせるとき。強制的に行動させるとかえってスムーズにいかないことが多いのではないでしょうか。「今やっている遊びは終了! みんな工作やるよ!」ではなく、「楽しそうに遊んでいるね。盛り上がっているところだと思うけど、誕生会のために作るものがあるんだ。みんなで作り終えたら、また遊ぼう」など、子どもの気持ちを想像し、その気持ちを尊重しながら進めます。

大事な注意事項などを話すときでも、ふざけて騒いでいる子がいたら伝えなくてはいけない話が子どもたちに伝わりません。そこで、「今からこういう話をするけれど、その前に君たちから何か言いたいことがある? あったら聞くよ」と、先に子どもが言いたいことをしゃべってもらいます。それがひと通り終わったら、こちらが話し出すようにします。

「静かにして、こちらの話を聞いて!」と急に言われても、気持ちがこちらを向いてくれません。頭ごなしにルールを言い渡すのではなく、「子どもたちに共感して気持ちを代弁する」「子どもたちの話を聞く姿勢を見せる」ことで、大人の話を聞けるようになるのです。子どもは自分の気持ちを酌み取ってもらったと思ったときに、はじめて大人の話が耳に入っていきます。

大人に「話を聞いてもらえた。相談にのってもらえた」ということが、子どもにはすごく大きなことで、大人に認められているという気持ちを抱きます。それは自己肯定感や自己有用感を育むことになります。大人に一方的に言い渡されたことに一時的に従っても、その行動は長く続きません。それは自分で決めていないからです。納得して前に進めるのは、大人と子どもが話し合って一緒に決めたことのほう。子どもと相談するスタイルで子どもが自己決定する過程を繰り返していくことが、のちのち成長の過程で生きてくるはずです。


(文・構成 生島典子)

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下浦 忠治

回答者プロフィール下浦 忠治 (しもうら・ちゅうじ)

1950年、奈良県生まれ。74年から東京都品川区で35年間、指導員として学童保育に携わる。2009年に退職。日本社会事業大学専門職大学院で「学童保育とソーシャルワーク」を開講。15年まで社会福祉士として東京都の児童相談所に勤務。現在は、東京成徳大学子ども学部で非常勤講師を務める。1都7県で放課後児童支援員認定資格研修の講師も担当。著書に『どの子も笑顔で居られるために 学童保育と家族支援』(高文研)、『放課後の居場所を考える』(岩波ブックレット)など。