支援員のお悩み相談室 第32回 新人指導員です。ある女子の私への態度が悪く、嫌われているようです。どのように接したらいいのでしょうか?
最近、指導員になりました。4年生の女の子についての悩みです。話がよく聞こえなかったので聞き返すと、「さっき言ったでしょ!」ときつい口調と怖い目つきでにらまれることが何度もあり、とてもイヤな気分になります。私はあぜんとしたままどうすることもできず、黙っています。ほかの指導員にはそんな態度はしないので、私を嫌っているようです。どのように接したらいいのでしょうか?(愛知県・指導員歴1年未満)
子どもとのかかわりを増やし、子どもの「気になる気持ち」や「伝えたい気持ち」といった思いに目を向けながら関係を作っていきましょう。
まずは、子どもの言動の根っこに目を向けて
このお悩みを寄せてくれた指導員の方は、「子どもに嫌われている」と思って傷ついているようです。できれば良好な関係を築きたいですよね。一方で、「さっき言ったでしょ!」といら立ちを見せたその子の気持ちはどこにあるのか、子どもの視点からスタートすることも大切です。「話をきちんと聞いてくれなかった」と傷ついている、もしくは「思い切って話しかけたのに・・・・・・」と不満に思っている可能性もあります。
最近、学童の現場に入ったとのことですが、子どもにとってよくわからない人が自分の日常に現れる変化は、少し不安なもの。わざとちょっかいを出す、排他的になる、先輩風を吹かせるなどの反応を示す子どももいます。「相手がどこまで自分を受け止めてくれるか」と反応をうかがっている部分もあるかもしれません。
そういう場合は、その子を避けるのではなく、かかわることから始めましょう。まず、以前はその子がどんな様子だったのかを先輩指導員に相談し、情報を集めるといいですね。嫌なことを言われたとき、子どもの態度そのものを叱るのは逆効果ですが、黙っていても伝わらないので、チャンスがあれば「そんな言い方しないでほしいな」や「ちゃんと話を聞きたかっただけなの」と、自分の気持ちを丁寧に伝えるのも手ですね。たとえその場で願ったような反応が返ってこなくても焦らないこと。気持ちは必ず伝わるので、だんだんと「こういう人なんだ」「話を聞いてくれるかも」と子どもが理解して安心できると、態度や反応が変わってきます。
子どもが「聞いてほしいこと」に耳を傾けながら、いら立ちを見せた根っこの気持ちは何かを考えてみるといいでしょう。その子は普段、話を聞いてもらえているのか、友達との関係や家庭や学校での様子などをほかの指導員たちと情報交換してみてください。
こちらから自分のことをオープンにしていくことも、かかわりのひとつです。指導員が遠巻きに様子をうかがっている雰囲気は子どもに伝わり、かえって不安にさせるケースもあります。共通の話題を探して話しかけたり、一緒に遊んだりしながら、機会を見つけて自分のことも伝えていきましょう。
ほかの子どもと遊ぶ姿でも伝えられるもの
気になる子どもとの関係にばかり気持ちがいくのもわかりますが、焦らないことです。自然と目の前にやってくる子どもとのかかわりも大切にしてください。そこで得られた気づきが、気になる子とのかかわりにも生きてくるのです。
子どもは、自分だけでなく、ほかの子どもとどうかかわっているかも見ています。子どもに優しくしている姿、一緒に楽しそうに遊んでいる姿、逆に注意ばかりしている姿や様子をうかがってばかりいる姿など、さまざまな対応を見て、「この人ってこんな指導員なんだ」と判断するのです。
「私にも同じように接してほしい」と思えるようになると、今度は逆に独占したがるなんていうことも。その子自身が「安心してこの人とかかわれる」と思えるように、一緒に楽しく遊んだり、子どもの話をよく聞いたりする時間を大切にしてください。子どもからのサインで気づかされることはたくさんあります。いつもうまくいくことばかりではありませんが、こういうことの繰り返しのなかで、子どもたちとの関係は作られていくのです。
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回答者プロフィール飛鳥井 祐貴 (あすかい・ゆうき)
東京都生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科卒。玉川大学教育学部卒。
幼児から成年までの水泳・サッカー・幼児教育・野外活動の指導、学習障害(LD)児の学習支援プログラム等に6年間従事。2001年から神奈川県横須賀市の学童クラブに勤務し、現在は施設長を務める。放課後児童支援員認定資格研修、全国学童保育連絡協議会主催の指導員学校ほか、県内外の市町村行政研修や研究集会等で講師を務める。神奈川県学童保育指導員連絡会会長。