支援員のお悩み相談室 第33回 指導員のことを「先生」と呼ぶようにしていますが、子どもが指導員をあだ名で呼ぶのはよくないでしょうか?
うちの学童保育では、指導員のことを「先生」と呼ぶようにしています。しかし、日々の生活の中で子どもが指導員をあだ名で呼ぶことがあり、そんなときは注意するべきかどうか迷います。私はあだ名や名前で呼ぶことも、親しみがあっていいのではないかと思っています。(神奈川県・支援員歴4~9年)
“呼び捨て”には配慮が必要ですが、愛称なら注意する必要はありません。呼び方を通して「大人と子どもの関係」を確かめ合う機会につなげていきましょう
子どもと指導員との信頼関係が大事
指導員のことを「先生」と呼んでいるところや、愛称で呼んでいるところなど、学童保育によって呼び方はさまざまでしょう。呼び方を決めていても、子どもからまったく違う呼び方で声をかけられるケースもあります。ときには「ママ」「じーじ(おじいちゃん)」「お父さん」と、親しみを込めて声をかけてきて「あ、違った」と子どもが苦笑いする場面も。子どもは相手の雰囲気で無意識に呼びかけることがあるので、「呼び方が決まりと違う」からといって、一律に注意する必要はないと思います。
放課後を共に過ごす子どもと指導員の間で成り立つ呼び方も、それ以外の活動(学校や外出時など)の際は、外部の人からどう捉えられるかわかりません。特に子どもが大人を“呼び捨て”にしていると、それを聞く周りの子どもや保護者、職員や地域の人たちが不安になるケースもあるので一定の配慮や指導が必要になります。
私自身は、子どもたちや同僚から「あすせん」(飛鳥井先生が略されたもの)と呼ばれています。長く一緒に過ごしている子どもや保護者からは「あす」と親しみを込めて呼ばれることもあります。同僚たちも、くだけたときは「あす」、保護者や地域・学校関係者との会合場面では「先生」と使い分けています。一つの呼称にこだわると固くなりすぎたり、くだけすぎたりして難しい場面が出てくるかもしれません。
大切なことは呼び方そのものではなく、子どもと指導員、保護者の間に信頼関係があるかどうかです。そこに含まれるニュアンス次第で、どの言葉もよくも悪くも聞こえるのです。呼び方で自動的に信頼関係が作られるわけではないので、子どもや保護者との信頼関係を土台に据えたうえで、“呼び方”を考えていく必要があるでしょう。
学童保育指導員(放課後児童支援員)のあり方について考える機会に
質問者の学童施設では、「先生」と呼ぶように統一しているようにお見受けします。違う呼び方をする子どもに注意する前に、まずは呼び方について職員間でどのように考えているのかを共有してみましょう。質問者と同じように「愛称でもいいのでは」と思っている人もいるかもしれません。自分の考えと違う場合は、子どもとの具体的なかかわり方も含めて、より丁寧に意見交換していくことが大切です。その上で、「放課後児童支援員」のあり方を日頃から確かめ合っておきたいですね。
「放課後児童支援員」は、小学校の先生とも、家庭の保護者とも異なる立場で、その中間のような存在です。放課後の子どもを預かる学童保育において大切なのは「毎日の生活の場の保障」、そして子どもたちにとって「安心して心を開ける場所」であることです。呼び方を考えることを通して、「放課後児童支援員」という仕事への理解を深める機会にしましょう。
新人の指導員が呼び捨てにされているときは配慮が必要
入ってきたばかりの指導員やアルバイトのことを、子どもが呼び捨てにするケースがあり、そういう場合は少し気を使います。年齢が近いために友達感覚で接してしまったり、後から入ってきた新人に対して先輩ぶりたかったりするのでしょう。そうした勘違いは子どもの成長過程のひとつでもあるので、その場その場で教えていく必要があります。新人が「せっかく仲良くなろうとしているのだから……」と、そのままにしているようなら、周りの先輩指導員が「呼び捨ては失礼だから、〇〇さんって呼ぶようにしよう」と教えつつ、子どもにも伝えることが必要です。
大事なのは、相手を大切に思う気持ちがあるかどうか。子どもと指導員の間で了承されている呼び方でも、はたから見ていて感じる違和感は、他の指導員と一緒に考え合うことも大切です。同時に、子ども自身が相手を大切に思う呼び方ができるまでに社会性が育っているかどうかについても考えてみましょう。
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回答者プロフィール飛鳥井 祐貴 (あすかい・ゆうき)
東京都生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科卒。玉川大学教育学部卒。
幼児から成年までの水泳・サッカー・幼児教育・野外活動の指導、学習障害(LD)児の学習支援プログラム等に6年間従事。2001年から神奈川県横須賀市の学童クラブに勤務し、現在は施設長を務める。放課後児童支援員認定資格研修、全国学童保育連絡協議会主催の指導員学校ほか、県内外の市町村行政研修や研究集会等で講師を務める。神奈川県学童保育指導員連絡会会長。