支援員のお悩み相談室 第40回 子どもたちに自主性や主体性を持ってもらいたいと働きかけていますが、うまくいきません。どのような工夫をするといいでしょうか?
普段から子どもの意見を尊重し、何かを決めるときには子ども同士で話し合い、行事も子どもたちで運営するようにしています。しかし、きちんと実践するのが難しい場面もあります。どのような工夫をすれば、子どもの自主性や主体性を伸ばしていけますか?
低学年のうちは、支援員の関わりが必要です。子どもが楽しく取り組めるように工夫をしましょう。
「やりたい気持ち」を引き出すアプローチは、その子に合わせた方法で
低学年のうちは、何にでも興味を持ってやりたがる子もいますが、一方で、自分から一歩を踏み出すのが苦手な子、挑戦して失敗するのが怖い子、周りの評価をとても気にする子など、自分の気持ちを素直に表現できない子もいます。
以前、伝承あそびのコマ回しに挑戦していて、技の検定に取り組んだことがありました。ある子が「検定はやらないよ」と言って、コマに興味を示さず、学童でコマ回しをする場面もありませんでした。しかし、お母さんに聞くと、「家ではすごく熱心にコマを回しているんですよ。コマが好きみたいです」と言います。実は、コマは回したいけれど、みんなの前で失敗する姿を見せることが恥ずかしかったようです。
そこで、「こっそり練習する?」と声をかけたら反応してくれ、ふたりでコマ回しの練習を始めました。「すごい! 上手に回せるね」「いつの間に技ができるようになったの」と話をする中で、「そろそろ検定受けてみる?」と言うと、すんなりと検定に挑戦し始めました。
気持ちや行動につながるアプローチの仕方はその子によって違い、それを聞き出す大人の声かけも大切です。友達とケンカして嫌な気持ちになったときなど、日常的な場面も同じで、「相手に謝ってほしい。仲直りをしたい」と本人が思っていても、なかなか言えないことがあります。「(支援員も)一緒に行って話をしてほしい」「今日は直接言えない」「(自分では言えないから、支援員から)言っておいてほしい」など、いろいろな反応が返ってきます。
その子がなぜ行動できないのかを考え、子ども自ら考えて取り組めるように「どうしたいのか」を問いかけます。その反応を大事にしながら、接し方や声かけを工夫してみましょう。そういう経験を積みながら、一つひとつ自分自身でいろいろなことを決められるようになります。自主性はステップを踏みながら、少しずつ身に付いていくのです。
子どもの発達段階に応じて大人が上手に関わっていく
学童保育で何かを決めるときに、子どもたちが主体となって「〇年生会議」「子ども会議」などと名付けて、話し合いをすることがありますよね。学校でも会議を行う勉強もしていて、4、5年生になると、自分たちで会議を運営する力がついてきます。子ども同士で話し合って、本当の意味での主体的な行動ができるようになるのは高学年になってから。低学年のうちから、「何でも自分たちで決めて、自分たちでやってほしい」というのは、少しハードルが高すぎるかもしれません。
最初のうちは、楽しくできるように大人が関わって会議進行を行い、子どもは参加しながらその姿を見て学んでいきます。そのうち、「話し合うのは楽しい」という経験を積みながら、「自分たちでもやってみたい」という思いを持つようになります。支援員は、子どもが主体的に取り組めるきっかけをつくり、それを広げていけるようにサポートしていくのです。
行事などの小さな取り組みの中で、子どもが活躍できるように心がけてみましょう。例えば、私が勤務している学童保育では、毎月の誕生会の司会は3年生がやることになっています。1、2年生はその姿を見ながら、「自分も、いずれ司会ができる」とイメージしています。そうすると、3年生になったタイミングで、「(友達の)タカシくんが7月生まれだから、僕は7月の誕生会の司会をしたい」と立候補してくる子が出てきます。
子どもたちが「やり切った」「楽しかった」と思えれば、それまで「面倒くさい」と思っていた話し合いや準備も、「やってよかった」となります。「自分でやった感」「満足感」「充実感」が、「次もやってみよう」という自主性や主体性を育てることにつながります。どれだけ楽しんでやれたかが、「またやりたい!」につながるものとして残っていくのです。
私たち大人は、「自分で考えて、自分で決めて、自分で行動できる人になってほしい」という願いを持っています。そのためにも、低学年のうちは大人の力が必要です。学童保育の活動の中で、「どう考えているの?」「どうしたいの?」と子どもの意見を丁寧に聞き、自分で考えて行動できる場面を作っていくことを大切にしていきたいです。
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回答者プロフィール小野 さとみ (おの・さとみ)
1962年愛知県生まれ。名古屋市、東京都八王子市や町田市で放課後児童クラブ支援員として勤務し、支援員歴37年。現在は町田市の放課後児童クラブの支援員。
全国学童保育連絡協議会・副会長、月刊『日本の学童ほいく』編集担当役員を務める。