支援員のお悩み相談室 第15回 おやつの時間にないものを欲しがり、「金を払っているのに」などと横柄 で子どもらしくない態度に 驚き 、困っています。

回答者:河野伸枝

2020.10.01

おやつがパンのときに「アイスくれ」、小豆団子のときに「みたらしをくれ」などと、いつもないものねだりばかりする子がいます。 期待に応えられないと、「金を払っているのに」などと言ったり、「使ったコップを洗って」と突き出してきたり、自分勝手なふるまいも目立ちます。ほかの支援員は慣れているようですが、こんな 子どもらしくない態度にどう接すればいいでしょうか?(一部省略 /大分県・支援員歴1年)

生意気盛りの「子どもらしい」反応 です。ここはどっしりと構え 、 できないことはできないときっぱり伝え、意見を聞けるところは尊重すると伝えましょう。

 

「子どもらしくない」と否定的に見ていませんか?

「子どもらしくない」という表現から、もともと相談をいただいた支援員のなかに「理想の子ども像」があるのだと推察されます。それは、「かわいらしく、何でもいうことを聞いて、『先生、先生』と寄ってきてくれる」イメージかもしれません。しかし、学童期の発達過程において、この時期は一番の生意気盛り。「ギャングエイジ」という言葉があるくらい、やんちゃぶりを発揮して大人を試したい気持ちが旺盛です。

私の長い経験から見れば、こういった子はむしろ「子どもらしい子ども」だといえます。「金を払っているのに」なんていうせりふも、子どもは普通に言うんです。

むしろ、支援員が「子どもらしくない」と否定的な見方をしていると、子どもたちはそれを感じ取り、余計に反発を招きます。「子どもらしい、らしくない」と、子ども全般をひとくくりに捉えていると、一人ひとりが見えにくくなります。ポイントは、一人ひとりが違うことを認識して、「その場にいるその子」に向き合っていくことです。

 

「イヤなことはイヤ」と言い、できることは尊重する

小学校低学年の子どもたちは社会性を学んでいる真っ最中で、言っていいこと、悪いことを選択していく時期です。子どもと向き合っていくなかで、お互いに「ムカつく」と思うことも当然あります。そのときは、率直に「イヤなことはイヤ」と言っていいのです。支援員が「エッ!? それはどうなの?」と思うような言葉があったら、「そういう言葉は使わないでほしい」「こう言い換えてほしい」と、きちんと伝えていきましょう。「使ったコップを洗って」と言われたら、「自分で洗ってね」と言えばいいのです。学童の場では、子どもともお互い率直に言いたいことを言い合える関係を築いていきましょう。

おやつの時間は子どもにとって楽しみな時間です。なるべくなら、子どもの欲求に応えてあげられたらいいですね。当然、その日のおやつを当日に変更することはできないので、ないものねだりには応えられませんが、子どもの気持ちを受け止め、「わかった、この次ね」と、次に楽しみを持たせるように対応するといいと思います。

そして、みたらし団子が用意できた日は、「あなたが楽しみにしていたから、みたらし団子を探してきたよ」と声掛けすれば、子どもは「ああ、気にかけてくれていたんだ」と思うでしょう。

支援員が困惑する姿を見たいだけなのかも

寄せられたお悩みには、「子どもらしくない、こんな子と接するのは、私には無理です」ともありました。子どもに何か言われたとき、一つひとつに的確に対応しきれず、オロオロしたり、困惑したりする姿を子どもは見抜いているんですね。そして、それをからかって試しているようなところがあるのでしょう。

そういう場合には、子どもの前でビクビクしないことも大切です。もう少し、どっしりと構えていても大丈夫だと思いますよ。


(文・構成 生島典子)

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河野伸枝

回答者プロフィール河野伸枝  (こうの・のぶえ)

1959 年、鹿児島県生まれ。幼稚園教諭を経て、90 年に埼玉県原市場学童保育の支援員となる。支援員歴は30 年。これまでに、全国学童保育連絡協議会の副会長、埼玉県学童保育連絡協議会の副会長などを歴任。現在は、一般社団法人飯能市学童クラブの会の理事を務める。2015 年から始まった放課後児童支援員認定資格研修の講師も担当。著書に、『わたしは学童保育指導員―子どもの心に寄り添い、働く親を支えて』(高文研)、『子どもも親もつなぐ学童保育クラブ通信』(高文研)など。