支援員のお悩み相談室 第14回 学童で子どもから蹴られたり悪態をつかれたりして、好感度が低いです。がんばっているのに、子どもとうまくいかないのはどうしてでしょうか?

回答者:下浦 忠治

2020.09.09

自分は堅物でもなく、支援員としての仕事をがんばっているつもりなのに、普段子どもから蹴られたり悪態をつかれたりします。どうすれば子どもとの関係をうまく築けるのでしょうか?(東京都の支援員歴1~3年の方から寄せられたお悩みです)

原因がどこにあるかを検証し、一人でうまくいかないときは、チームで解決策を話し合いましょう。

 

支援員との距離感を確かめる、子どもの「試し行動」かも

支援員が子どもとの信頼関係を築けない場合、「子どもの側に原因がある」「支援員の側に原因がある」「学童の支援員チームに原因がある」の3つの理由が考えられます。

まず、子どもの側に原因がある場合です。里親・里子の関係など、社会的養護(家庭に代わり社会が養護すること)の世界では知られていますが、子どもの「試し行動」というものがあります。これが学童保育(放課後児童クラブ)で行われているのです。子どもから見て「この支援員はどんな人なのか?」「どこまでやったら怒るのか?」「どこまで許してくれるのか?」と距離感を確かめる行動です。

特に、その学童に新規でやってきた支援員や、経験の浅い支援員に子どもは試し行動をしがちです。また、新年度に新しく入ってきた子どもが、ベテラン支援員に試し行動をする場合もあります。そういうときは、その子を受け止めつつ、よくないことはきちんと叱りましょう。特別なことではなく、通常の保育と同じです。自分を受け入れてくれて、悪いことをしたら叱ってくれる人だとその子が認識したら、そこから信頼関係を築いていけます。

特定の子どもが蹴ったり、悪態をついたりする場合は、その子に問題があると想定できます。子どもの言動一つひとつに背景があるので、何が原因で悪態をついているのか、暴力をふるっているのかを考え、その子を捉え直す必要があります。子どもの家庭環境や家族との関係性なども把握したうえで、支援員のチームで検討しましょう。

管理的な目線ではなく、共感を持って遊びに加わる

悪態をつく子どもが複数の場合は、支援員の側に原因がある可能性があります。普段子どもたちとどんな関わり方をしていますか? 支援員の仕事を「子どもを管理すること」だと考えると、自覚していなくても注意する言葉ばかりを言ってしまいます。特にまじめで几帳面な人ほど、細かいことも見逃せず、管理的な言葉で注意し続けてしまいがち。そうすると、子どもたちからは口うるさい支援員だと思われてしまい、なかなか「放課後を共に過ごす仲間」だと認めてもらいにくくなります。

「がんばっている」=「注意をする」ではありません。心がけるのは「子どもと向き合う」こと。子どもを理解するためには、じっくり話を聞くなどしてみましょう。学童の秩序を保つことばかりに気を取られていると、子どもとの距離は縮まりにくくなります。

学童は「遊び」を軸とした生活の場です。相談者は、もしかして一緒に遊んでいても、遊びに入り切れていないのではないでしょうか。遊びを通してその子への理解が深まるので、一緒に遊んで「楽しかったね」「またやろうね」という共感の言葉をかけあえる関係性になることが大事です。

 

 

支援員同士のチームとして、保育を振り返り検証する

特定の支援員に悪態を繰り返す場合は、子どもたちのからかいの対象になっていると考えられます。そういうときは、支援員のチーム全体で一人ひとりの子どもへの関わり方、遊びへの入り方、声のかけ方、注意の仕方などを話し合い、検証していく必要があります。一人の支援員が悪態をつかれているときに、他の支援員はフォローしていますか? 子どもが特定の支援員に悪態をついてきたら、ほかの支援員が入れ替わるようにするというチームワークがあれば変わっていくと思います。その支援員一人の問題にしないことです。

支援員のチームミーティングは、自分の悩みを語り、それぞれが意見を言い合える場所になっていますか? 形だけのミーティングでは、チームとしての運営が難しくなります。支援員同士がちゃんと悩んでいることを相談し、みんなで保育の内容を振り返り、チームとして子どもたちにどう関わっていくのかを確かめ合う姿勢が必要です。

悩みを抱えている支援員も、子どもとの関係をうまく構築している支援員の日々の関わりから学ぶことも多くあります。からかわれない支援員は、自分とどこが違うのか、振り返って違いに気づき、改善していきたいですね。

(文・構成 生島典子)

 

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下浦 忠治

回答者プロフィール下浦 忠治 (しもうら・ちゅうじ)

1950年、奈良県生まれ。74年から東京都品川区で35年間、指導員として学童保育に携わる。2009年に退職。日本社会事業大学専門職大学院で「学童保育とソーシャルワーク」を開講。15年まで社会福祉士として東京都の児童相談所に勤務。現在は、東京成徳大学子ども学部で非常勤講師を務める。1都7県で放課後児童支援員認定資格研修の講師も担当。著書に『どの子も笑顔で居られるために 学童保育と家族支援』(高文研)、『放課後の居場所を考える』(岩波ブックレット)など。