支援員のお悩み相談室 第50回 学童保育の主任になりました。支援員みんなが同じ方向を向いて活動できるようにするには、どういうことに気を付ければいいですか? (子ども編)

回答者:田嶌 大樹

2023.11.20
学童保育の主任になり、これから全体を見ていかなくてはいけないと感じています。毎日の遊びだけでなく、1年を通して子どもの成長を見守り、支援員が同じ方向を向いて活動できるようにしていきたいと思っています。どういうことに気を付けていけばいいでしょうか?

※「年間運営指針」について、「子ども編」と「支援員編」の2回に分けてご紹介します。
今回は「子ども編」です。

子どもの1年間の活動目標や、適切な関わり方を「見える化」して、支援員みんなで共有しましょう。

子どもの成長の目安になる、学年ごとの目標を立てる

放課後児童クラブは、学校が終わってから帰宅するまでの数時間を過ごす場所。ランドセルを片付けて、宿題をやって、おやつを食べて・・・・・・と、バタバタと時間が流れてしまう感じはないでしょうか。日々のルーティンをこなすのも大切ですが、少し引いた目線で子どもを見守りながら、成長を促す適切な関わり方について1年を通して考えておくのはとても大切です。

私が携わっている放課後児童クラブでは、何を目指して集団で生活していくのかを記した「年間運営指針」を作っています。1年を4期に分け、「全体の目標」「学年ごとの目標」「季節のイベントや行事」など、子どもの「こういう姿が見えるといいな」という活動目標を書き込んであります。これは計画をきちんと遂行するためものではなく、子どもとの関わり方をより良くするために1年間の流れを「見える化」することを目指したものです。

【参考例】年間運営指針(子ども編)
4~9月

10~3月

【年間運営指針 制作のポイント】
  • 1)1年を3カ月ごとの4期に分ける
    • 4~6月「ならし期」
    • 7~9月「チャレンジ期」
    • 10~12月「発展期」
    • 1~3月「成熟期」

  • 2)学童全体の活動目標を立てる
    • ならし期:新しい生活に慣れる。自分のことができるようになる。
    • チャレンジ期:やりたいことを見つけ、チャレンジする。
    • 発展期:自分の力と仲間の力を見直し、役割分担する。
    • 成熟期:目標を持って生活する。誰かのためを意識する。

  • 3)学年ごとの活動目標を立てる
    • 1年生:生活に慣れ、ルールを覚える。好きなことを深めていく、など。
    • 2年生:自分がしてもらってうれしいことを下級生に教える、周りと協力する、など。
    • 3年生:リーダーとしてクラブを仕切り、できることを周りの人に教える、など。

  • 4)季節のイベント・親子会などを計画する
    • 入所式・卒所式のほか、七夕、ハロウィーン、クリスマスなど季節のイベント。
    • 親子交流会や、保護者向けのワークショップなど。

集団の目標を押しつけない。一人ひとりの特性にも目を向けて

学童は異学年集団という特長があります。1年生と3年生では発達の差があり、同じ学年でも個人によって発達の差があるので、活動目標がそのまま当てはまらず、思い通りにいかないこともあります。例えば、2年生から新しく入った子と、1年から通っていた2年生とでは、学童での慣れや感覚のずれがあります。運営指針と照らし合わせて「2年生なのに、こんなことができないなんて」とならないように気を付けなくてはいけません。

「まだ慣れていない」「成長がゆっくり」という子には、ひとつ下の学年の項目が参考になります。逆に2年生でリーダーシップを発揮できる子には、学年を超えて3年生に求められるリーダーとしての役割を担ってもらってもいいですね。

また、学年が上がるごとに責任感やリーダーシップを発揮できるようになるのも、異学年集団ならでは。1年生のときは好き勝手をやっていた子が、2年生になると下級生の面倒見がよくなったり、3年生になったら急に王様のように偉そうにしたりすることもあります。それは、集団の中での自分のポジションがわかっているからこそ。影響力のある子には積極的にリーダーになってもらったり、「こんなことしたらみんな喜ぶから、やってもらえない?」と、その子が感じている使命感を活かしたり、わかりやすい言葉で「次はこうしてみよう」と伝えていきましょう。

「年間運営指針」を、迷ったときに確認できる共通理念として活用を

年度初めには、子どもが「こうなりたい」「こういう活動をしたい」という自分の目標を考えたり、学年ごとの目標をミーティングで話し合ったりできる時間を設けるといいと思います。年度初めは、2、3年生にとっては「下級生と一緒に楽しくやっていこう」という準備期間であり、1年生は上級生を「放課後をどうやって過ごすんだろう」と見本として見ています。異学年集団の中で上下関係を経験しながら、自分の目標も忘れずに全体で動いていく意識づけにもなります。

「年間運営指針」の内容は、施設によって違っていいと思います。それぞれの施設が大切にしたいことをまとめてみてください。支援員みんなでそれを共有できていれば、子どもとの関わり方を考える目安として機能します。「こういう場合どうすればいいのか」「子どもにとって何が大切なのか」「何のために学童を運営しているのか」と迷ったときに、基本理念に立ち戻って判断することができます。

「年間運営指針」は、あくまでも集団をどう運営していくかという目安です。個人の特性にも配慮しながら臨機応変に対応を考えたり、必要なときは運営指針を修正したりしながら、放課後の子どもたちがよりよい方向に進むような働きかけをしていきましょう。

※次回(第51回)は「年間運営指針」の「支援員編」です。


(文・構成 米原晶子)

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田嶌 大樹

回答者プロフィール田嶌 大樹 (たじま・ひろき)

東京学芸大学 児童・生徒支援連携コンソーシアム特命助教
専門は「あそび」を核にしたスポーツ・教育実践研究。現在は、放課後児童クラブにおける遊びの研究、企業や地域の大人と大学生・子どもを巻き込んだ学校外教育フィールドの開発、運動遊びを通じて子どもの能力を高めるプログラムの開発などに取り組む。学校教員研修や放課後児童クラブ支援員向け講座などの講師も務め、その活動は多岐にわたる。
著書『子どもの貧困とチームアプローチ “見えない” “見えにくい”を乗り越えるために』(共著・松田恵示監修/書肆クラルテ)では、大学生が社会課題の解決を目指して教育実践をしながら学ぶ「サービスラーニング」について論じている。

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