支援員のお悩み相談室 第9回 子どもが心ない言葉を友達に発してしまったときに、どう対応すればいいのでしょうか?
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子どもが友達を仲間はずれにするような言葉や、厳しい言葉を発してしまうことが見受けられます。「そんなことを言わないでみんなで遊ぼう」と声をかけますが、それだけではなかなか改善されません。どうすればいいのでしょうか?
子どもは、自分の何げない言葉で相手が傷ついていることに気づいていないことがあります。大人が橋渡しをすることが大事です。
相手の気持ちを考えることが、子どもにとって大きな経験となる
低学年の子どもが遊んでいるときに、ちょっと気に入らないことがあると「○○ちゃんとはもう遊ばない!」「今、一緒に来ないと絶交だよ」などと言うことがあります。言った方は悪気なく言っているのですが、言われた方はとても傷ついて、家に帰っても「ドヨーン」と心が沈んでしまいます。
いつもは仲よく遊んでいるのに、友達を仲間はずれにするような言葉や相手を傷つけるような言葉を言ったときは、私たち大人が間に入ります。まずキツい言葉を言った子どもに、「『遊ばない』『絶交』と言われた友達はとてもイヤな気持ちになるんだよ」と説明します。そして、なぜそのような言葉を言ってしまったのかを聞きます。たいていは言葉の意味に思いが至らないまま厳しい言葉を発してしまっていることが多いので、言葉の意味を考える橋渡しの役割を大人が担うことが必要です。
日常生活の中でも、「ばか」「死ね」「ウザい」「消えろ」「キモい」など、大人が聞くと眉をひそめそうな言葉を友達に言ってしまう子もいます。言った方は、「イライラするから」「みんなが言っているから」と言葉の意味と現実がつながっていないまま使っていることが大半です。もちろん言った子も相手を攻撃する言葉であり、言ってはいけない言葉だということはわかっているのです。でも、そんな言葉を言われたらどんな気持ちになるのか、相手の立場には立てていないのです。
そういうときは「その言葉で相手が悲しい気持ちになるからやめようね」と注意します。子どもによっては「自分は言われても、全然平気だし」という言葉が返ってくることもあります。「でも、私が言われたら悲しい気持ちがするよ。悲しい気持ちがする人がいるということは使ってはいけないということだよね」と伝えます。自分のイライラを発散するために発した言葉が相手へどんな影響を及ぼすか、立ち止まって子どもと一緒に考えることが大事です。
強い言葉を発した子どもは、家庭や学校で何か問題を抱えているのかもしれません。その子のモヤモヤした気持ちを聞いてあげることも必要です。その後も注意深く見守りつつ、保護者に家庭での様子を尋ねてみましょう。この先、言葉の暴力が本格的ないじめなどにエスカレートする可能性もありますし、暴言を発する子どもが、友達から仲間はずれにされる事態にもなりかねません。頻繁に声をかけていくことが、そのような事態を抑止することにもつながると思います。
仲間はずれにされた子どものつらさに共感する
一方、仲間はずれにされたり、イヤなことを言われたりした子は心の痛みを持っているので、ちゃんとフォローが必要です。「イヤな気持ちがしたよね」と、つらい気持ちに寄り添って共感します。そして、相手の子があまり考えずに言葉を発したことや、「あなたがダメだから言われたわけではない」と伝えることで、子どもの心は少しずつ癒やされ、気持ちの落ち込みも回復していきます。
人にイヤなことをされた経験を持つ子どもが、同じことをやり返す場合もありますが、そうならないようにするためにも「イヤなことをされた相手には、自分で『そんなことをしないでほしい!』と言わなきゃいけないよね」と話します。言われたことを受け止めて、自分のイヤな感情を相手に伝えて消化できるように促しましょう。
また、傷ついている子どもには、保護者の力も必要です。保護者に「今、お友達とトラブルが起こっていて、相手の子どもや本人と話し合っているところです」と伝えて、「ご家庭でも『大丈夫だよ』と声をかけて見守ってあげてください」と見守りをお願いします。
子ども同士のトラブルがない状況だけがよいとは限りません。高学年になると、子どもの間で起きているトラブルが大人から見えにくくなるので、低学年のうちに「その言葉は、相手はイヤな気持ちがするよね」と、一緒に考える機会を積み重ねていくことが子どもの成長には必要なのです。すぐには変化がないように見えても、自分自身を振り返ることや、友達との関係を考えることなどの経験は、子どもたちの「心のひだ」となっていきます。言葉による仲間はずれのようなことがあったときにこそ、それがどういう意味を持つのかを、子どもたちが感じ取れる場面にしてほしいと思います。
(文・構成 生島典子)
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回答者プロフィール小野 さとみ (おの・さとみ)
1962年愛知県生まれ。名古屋市、東京都八王子市や町田市で放課後児童クラブ支援員として勤務し、支援員歴37年。現在は町田市の放課後児童クラブの支援員。
全国学童保育連絡協議会・副会長、月刊『日本の学童ほいく』編集担当役員を務める。