支援員のお悩み相談室 第10回 新型コロナウイルスの感染予防は引き続き必要になると思いますが、子どもたちに予防策を守らせるにはどうすればいいでしょうか。

回答者:小野 さとみ

2020.05.22

緊急事態宣言が解除されても、引き続き新型コロナウイルスの感染予防対策は必要だと思います。でも、マスク着用を促しても嫌がって外してしまう子がいて、感染予防を徹底していくのは難しいです。どのようにすればいいでしょうか

状況が変わるたびにていねいに子どもに説明し、感染予防のために必要なことや、自分がするべきことを、自ら考えて行動できるように促しましょう。

 

 

感染予防の大切さを子どもにきちんと伝え、一緒に考える

新型コロナウイルスの感染拡大による小学校臨時休校に伴い、3月初旬から放課後児童クラブが子どもの居場所の受け皿となってきました。保護者の皆さんが安心して子どもを預けられるように、私が勤める放課後児童クラブでは以下のようなことを徹底してきました。

① 朝、玄関前で手指を消毒して中に入る
②   必ず検温してからあそぶ
③ マスクを着用して過ごす
④ あそびの前後や食事前に手洗い・うがい・消毒をしっかりする
⑤ なるべく友達との距離をとって過ごす
⑥ お弁当の時間はなるべくおしゃべりしない
⑦ 支援員は施設や遊具の消毒や換気を徹底して行う


これらは、どの放課後児童クラブでもすでに心がけていることだと思いますが、今後も引き続き必要でしょう。こうした対策を続けていく上で大切なのは、決まりを子どもたちに浸透させるために、日々変化する社会の状況や感染予防の大切さをきちんと説明し、子どもたちと一緒に対応を考えていくことです。

例えば、私が勤務する放課後児童クラブでは、1日預かりが始まったばかりの3月初旬に「学校はお休みになったのに、みんなはどうして放課後児童クラブに1日中いるのか」という話をしました。「学校がお休みになったのは、新型コロナウイルスという感染症がはやっていて、この病気にかかると大変な事態になることもあるんだよ」「みんなが朝から放課後児童クラブに通うのは、お父さんやお母さんが働いているからだよね」「ここででみんなと過ごすことが、家族の一員としての役割を果たすことなんだよ」というように。まずは、そこから説明を始めたのです。

その上で、「みんなで生活していくために、感染予防を心がけながら一緒にがんばろうね」と、具体的な感染予防対策への理解を求めました。

 

繰り返し説明することで、自発的に取り組む力を引き出す

あるとき、こんなことがありました。「放課後児童クラブって、三密なんでしょ。だから、お父さんが危ないって言ってたよ」と言う子がいて、子どもたちがワーッと騒ぎ出したのです。そのときも、「確かに三密だけど、みんなはここに来る必要があって来ているんだよね。だから、みんなで協力して感染予防して健康を守ろうね」と説明すると、みんな納得して落ち着きました。

とはいえ、今までと違う過ごし方や新しい生活リズムに戸惑う子もいました。そこで、外あそびや集団あそびの後に、手洗い・うがい・消毒がなぜ必要なのかを繰り返し説明しました。また、子どもたちは密集・密接してあそぶことが多いので、「あそぶときは友達との距離を気にすることが大切だよね」といった声かけを繰り返してしています。

すると、マスク着用を「暑いからヤダ」「面倒くさいからヤダ」「うるさく言われるからヤダ」と言っていた子が、「マスクはするよ。今は着用することが必要なんだ」と変わってきました。お弁当の時間もなかなかおしゃべりをやめられなかったのが、「自分ができることは何か」を考えるようになり、徐々に静かに食べる姿が見られるようになりました。

支援員も、子ども同士の距離をとるために過ごす場所を大きく二カ所に分けたり、通常6人座るテーブルに2人にしたり、施設や遊具の消毒や換気にも気を配るなどいろいろな工夫をしています。そうした様子を見て子どもたちも、大人に注意されるからするのではなく、「みんなで感染予防をして乗り越えていくんだ」という雰囲気になっていくのです。

状況の変化に応じた新しい生活を一緒につくる

例年3月に桜もちを作るイベントも、「今回は手作りおやつができないかな」と話をするなかで、子どもたちも中止を理解してくれました。同様に春休み期間のお昼ご飯作りも、話し合ってやめました。

子どもたちは素直でまじめなので、理由がわからなくても言われたことは一時的にがんばってやることができます。しかし、それでは長続きしません。小学生ともなれば、取り組まなければならない行動の意味が理解できれば、自ら考えて行動していく力があるんです。これからも、例年当たり前のようにやっていたことができなくなり、新しい生活スタイルをつくり出さなければならないこともあるでしょう。そうしたなか、子どもたちが自ら考え、行動する力を引き出すために、支援員の皆さんは状況が変わるタイミングでは常にていねいな説明を心がけることが大切です。「子どもたちや保護者と一緒に生活をつくっていく」という気持ちで、新しい状況への理解を促してほしいと思います。

(文・構成 生島典子)

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小野 さとみ

回答者プロフィール小野 さとみ (おの・さとみ)

1962年愛知県生まれ。名古屋市、東京都八王子市や町田市で放課後児童クラブ支援員として勤務し、支援員歴37年。現在は町田市の放課後児童クラブの支援員。
全国学童保育連絡協議会・副会長、月刊『日本の学童ほいく』編集担当役員を務める。