たのしーと制作者インタビュー「遊びながら学ぼう!」 第13回 「英語の芽 ABCであそぼう」監修 東京学芸大学附属世田谷小学校 教諭 名渕浩司さん

2021.11.20

21年度の新シリーズ「英語の芽 ABCであそぼう」の企画・監修をしている東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の名渕浩司さんに、子どもの英語への取り組み方や「たのしーと」を制作する上でのこだわりなどを聞きました。

写真提供:名渕浩司さん

小学校で英語が必修化され、以前より英語に触れる機会が多くなりました。子どもが初めて英語に触れるとき、どういった点に気をつければいいでしょうか。

子どもが最初に抱く英語のイメージを、ポジティブなものにすることが大切です。子どもは大人に比べて未知なものに興味を持ちやすい特徴があるので、うまく好奇心をくすぐって初めての外国の言葉にも積極的に関わってほしいと思います。

とはいえ外国語は、人によっては強い不安感を覚えてしまうのも事実です。それには、未知のものに対する不安や心理的な壁を低くする工夫や手立てが必要です。例えば、動物をテーマにした活動では、クイズを出すときの答えをpanda(パンダ)やlion(ライオン)など英語と同じ名前の動物にしておきます。ヒントを英語で聞かせますが、そのヒントもわかりやすい色の英語名を使うと、子どもはそのまま理解できるし、答えも英語となるわけです。そして、「みんな、今英語だけで楽しめてたじゃん!」とポジティブな声かけをするのです。

まずは成功体験が大事なので、最初はとくに、日本語の中に広く浸透している英語だけでコミュニケーションできるような活動を心がけています。その上で、子どもの好奇心を刺激し、「英語って思っていたよりやってみると楽しい!」と思えるようにしたいですね。

子どもたちは、英語(外国語)のどんなところに興味を持つのでしょう?

子どもの興味は十人十色です。アルファベットの形に興味を持つ子もいれば、英語の童謡をまねして歌うのが好きで、休み時間にずっと歌っている子もいます。自然と英語の音に興味を持つことは、外国語に触れる上でとても大切なことだと思います。

「外国からきたことばはどれ?」にあるように、日本語には外国語が元になっている言葉が交ざっていることに気づくことも、子どもにとって新たな発見と興味の入り口になるでしょう。外国語には、日本語に置き換えることができない表現があります。言葉はその国の文化や環境、思考を反映していて、現代ではさまざまな語が交じり合って、より多様化していることにまで学びが深まり、英語が「楽しい」から「おもしろい」と感じられるきっかけとなることを期待しています。

 「外国からきたことばはどれ?」 日本語として浸透した外国由来の言葉を知ることができる

  

英語の芽 ABCであそぼう」の制作で気にかけた点はどこでしょうか。

外国語を学ぶ場合、音声で言葉に触れることがとても大切な過程なのですが、今回はCDなどの音源はなく、英語の先生が教えるわけでもないため、子どもが一人でも楽しめることを心がけました。そして、子どものこれまでの経験と、生活の中にあふれている英単語や英語フレーズだけで取り組める内容になるように意識しました。

ただ、言語はやはり「聴くこと」「話すこと」が重要です。英語は日本語と音声体系も大きく異なるため、導入となるアルファベットの正しい発音をどう伝えるかという点をよく考えました。別添の「アルファベットひょう」の読み方表記は、声に出した子どもができる限り本来の発音に近い音で読めるように工夫しています。「一般的な表記と違う」と感じる方もいらっしゃると思いますが、これをきっかけに、子どもたちにはより正しい英語の音についても興味を持ってほしいですね。

 「アルファベットひょう」 「英語の芽 ABCであそぼう」は、これを手元に置いて取り組みましょう

ご自身が英語に興味を持たれたきっかけは何ですか? また、好きな英語の言葉は?

小学校6年生でギターを始め、中学時代には洋楽を聴きあさっていました。ローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリンなどの洋楽ロックがカッコよくて、ギター片手に見よう見まねで歌っていたのを思い出します。当時は英語が好きでも得意でもなかったのですが、とにかく、ストーンズの「Jumpin’Jack Flash(ジャンピン・ジャック・フラッシュ」やツェッペリンの「Black Dog(ブラック・ドッグ)」といった名曲を「どうすればよりカッコよく歌えるか」というモチベーションで英語を勉強(?)していました。

音楽に由来する、「groove(グルーヴ)」という言葉が好きです。もともとはレコードの溝を指す意味でしたが、「波・うねり」といった使われ方が転じて、音楽や演奏についての一種の高揚感を表すようになりました。こういう日本語にするのが難しい、でもカッコいい言葉って魅力的ですよね。文化の違いが言語に表れることは、おもしろくて深いものです。音楽のみならず、「人生においても“groove”を忘れないように」と思いながら生活しています。

「英語の芽」シリーズはコチラ

(文・構成 福留香織)


プロフィール 名渕 浩司(なぶち・こうじ)

東京学芸大学附属世田谷小学校教諭
英語専科として3〜6年生の授業を担当。各種企業と共同で、小学生向けの英語教材の開発やアドバイザーも務める。理論と実践の往還を通して、「日本の小学生に合った英語の学び方」を研究。