支援員のお悩み相談室 第34回 子どもが悪いことをしても叱らず、機嫌取りばかりする指導員がいます。子どもを甘えさせるばかりでいいのでしょうか?
子どもをまったく叱れず、言いなりになって機嫌取りばかりしている指導員がいます。子どもが悪いことをしたときに注意をしたり叱ったりする役目を担う職員ばかりが情けない思いをします。どうすればその指導員にしっかり叱るようになってもらえますか? それとも、子どもを存分に甘えさせて、したいようにさせることが必要なのでしょうか?
「叱る」「叱らない」という対応の是非ではなく、「子どもの気持ち」について同僚と話し合うことからスタート
立場や関わり方が違う同僚と、チームで子どもを見守る態勢に
いつも子どもに注意したり叱ったりする役回りは損しているように感じますよね。子どもに嫌われるかもしれないし、大人の顔色をうかがう子どもの顔を見るのは心苦しいものです。私も過去に同じように悩んだ時期がありました。でも今は「損している」「情けない」「嫌な役回り」と感じることはありません。どうしてこのように変化したのでしょう。
私の場合、日頃の関わりの中で自分が子どもたち一人ひとりをどういうふうに捉えているかを同僚とたくさん話し合い、「指導員それぞれの見方があっていい」と確かめ合えたからです。どの指導員も子どもを大事に思っていて、「一人で保育をしているのではない」と実感できたことが大きかったと思います。
ほかの指導員はどんな思いで働いているのか、何が得意で何が苦手なのかを知るのも大事なことです。経験年数を積み重ねていても、苦手なことはあってよいのです。経験が長い指導員がいつも正解とは限りませんし、狭い捉え方をしていることもあります。大切なのは指導員が孤立しないようにすること。それぞれが万能ではないことを認め合ったうえで、チーム全体で子どもを見ていく態勢を整えましょう。
子どもの言いなりになっているように見える指導員は、実は叱れないことに悩んでいるのかもしれません。話し合いでそれがわかれば見方が変わるでしょう。また、いつも叱り役になっている指導員が、実は子どもと楽しく関わりたいがうまくいかず悩んでいるとわかれば、今度は周りが手助けしてくれるかもしれません。
子どもの気持ちを考えながら、支援員同士が理解を深める努力を
質問にある「子どもが悪いことをしたときに、注意をしたり叱ったりする」必要があるかどうかも振り返ってみましょう。「したいようにする子ども」が、誰かをたたいたり傷つけたりするケースなら止める必要がありますが、大切なのは子どもの背景を読み解くことです。なぜそのような言動をするのか、特定の人の前だけなのか、いつもなのか。指導員の対応の是非を問う前に、言動の底にある子どもの気持ちを捉えてみてください。
質問者から見たら気になる子どもの姿が、ほかの指導員も同じように感じているとは限りません。指導員によっては、ご機嫌取りではなく本当に気にならないのかもしれませんし、一緒に遊びながら機会を見つけて伝えようとしているのかもしれません。指導員のアプローチの仕方はいろいろあっていいのです。
子どもは「甘え(依存)」と「安心」を根っこに育っていきます。同僚が「何を感じていて」「どうしたいのか」に耳を傾け、受け止める中で、視点を変えるヒントがお互いに見つかることでしょう。そうすれば、その子にあった「甘えの受け止め方と必要性」も一緒に考えられるかもしれません。
子どもとの関わり方の手ごたえは試行錯誤の末に
質問者は子どもとの関係づくりに悩みはありませんか? 自身が保育や仕事について悩みがあったり、気持ちが落ちていたりするときほど、周りのことが気になるものです。叱る場面が続いて、子どもとの関係性が難しくなっているかもしれませんが、関係を回復するための試行錯誤の過程で子どもとの関わり方に深みが生まれることもあります。
子どもたちと関わる時間そのものに手ごたえを感じると、もっと保育が楽しくなり、「叱る」「叱らない」という方法論にこだわらない視点が生まれるでしょう。子どもとの関係づくりに四苦八苦しながら取り組んでいる同僚の姿からこそ、学ぶものは大きいのです。
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回答者プロフィール飛鳥井 祐貴 (あすかい・ゆうき)
東京都生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科卒。玉川大学教育学部卒。
幼児から成年までの水泳・サッカー・幼児教育・野外活動の指導、学習障害(LD)児の学習支援プログラム等に6年間従事。2001年から神奈川県横須賀市の学童クラブに勤務し、現在は施設長を務める。放課後児童支援員認定資格研修、全国学童保育連絡協議会主催の指導員学校ほか、県内外の市町村行政研修や研究集会等で講師を務める。神奈川県学童保育指導員連絡会会長。